2007年1月28日日曜日

「気」の実験ビデオを検証する。

で、随分と時間が経ってしまったが、年末(12月30日)に放送されたテレビ朝日系の特別番組「たけしの超常現象SP」内で取り上げられていた「気功」に関する実験の話である。

知り合いの知り合いの、そのまた知り合いくらいの人からDVDに焼いたそのテレビ番組録画のVを借りて見ることが出来た。

ネットのストリーミングでも見れたことは見れたのだが、検証のためには何度も一時停止してとめたり、繰り返して見たりしなくてはならない。すごく不便であった。

「何かに録画したものを使わないことには詳しいことは解からないな、何も言えないな」と思っていたところにDVDのハイビ画質で見れたというのは非常に助かった。

まず、そのDVDを借りずとも、そうまでしなくてもすでにわかってしまってことはあった。スタジオ内で行なわれた実験のほうだ。

あれだけ大人数を近間隔で横一列に並べてしまうと、(ぶつかりはしないか、という意識が働き)どうしてもからだを横方向には動かしづらくなり、前か後ろにしか倒れられなくなる。

しかも、ご丁寧に後ろには(調度人数分の長さの)マットが敷いてあるわけで、これではまるっきり「うしろに倒れてください」とリーディングしているのも同じことなのである。

以前も書いたが、人間というものは目を閉じたままだと、そうそう長く立ってられるものではない。せいぜい10分がいいところなのではないか。こういうことがはじめて、という普通の人ならば4・5分が限界なのではないか。自分の経験だと大体は(あくまでも確率でいうとだが)7人を横に並ばせれば20分はかからないはずだ。

最後までひとり残った状態の人間のほうがどうしても長く立ってられるような気がするがそういうわけでもない。これは一種の暗示効果というか、「倒れても安全なんだ」という感覚がすり込まれてしまうと逆にすぐに倒れやすくなってしまう(と師匠に教わった)。

嘘だと思うならば、同じ状態を再現してやってみるといい。両脇になにもない状態ならば結構持つが、両脇に(あまり親しくない)人が立たれるとものすごく不安定になるものなのだ。

さすがというべきか、高田延彦は約二十分間は持ちこたえた。しかし、高田は年末にこんな番組に出てる場合じゃないんだが(笑)。プライドのほうは持ちこたえられなかったのか。

水着の女性をプールサイドに並べて立たせる、という実験に関しても同じようなことがいえる。まして「水着」を着せられていて、倒れても一番安全な方角は前にあるプールの水の中しかないのだからどうしたってプールの中に落ちてしまう。

と、こういう仕組みである。

少なくとも、このふたつの実験では、はたして気というものが人間の体に「力」として作用したのかどうかという証明にはなってはいない。(もちろん否定にもならないのだが)

また、レインボーブリッジから約2キロ離れたところに立っている番組アシスタント(古瀬絵理)を遠隔気功で倒す、という実験に関しては、その借りてきたDVDの助けがなければ解明は出来なかったであろう。

トリックを見破ることが出来た。

ひとことでいえば、ビデオの編集で、さも同時に倒れたように見せているだけなのだ。
レインボーブリッジの上から気功師が「1分以内に(倒す)」と言ってから、ここでなんと一回テープをカットしてしまっているのだ。本来ならばここでは絶対に絶対に編集を入れてはいけない個所なはずなのにだ。何故か。

理由は、そのあとで三画面(気功を送る人間の映像は一画面のみ)を同時に流して時間的にあわせているだけだからだ。

「1分以内に」と宣言してから実際にその実験台となった古瀬絵理がマットに倒れこむまでには相当のタイムラグがあったはずだ。下手をすれば2~3分くらいはあったかもしれない。

何故そんなことが判るかというと、気功を送っている人間の後ろを通り過ぎたクルマのエンジン音と、実際に映像に映っている、通り過ぎていったクルマの車種(大きさといった方がいいか)が違うからだ。(古瀬に落ちている影の長さの差というものから、もっと時間が経っているはずだと指摘してくれた方がいた。しかしこの画面ではわかりづらいのが残念である)

ここで編集(というか、時間の調整)作業をやったということがバレバレなのである。

さらに古瀬が後ろに尻餅をつくようにして倒れこんだ直後に、気功師を映しているビデオだけを止めて、そこで彼の手の動きをカットしてしまっているのもイタかった。

考えてみればいい。もし本物だったら、そのまま手の動きを写しつづけてもなんの支障もないはずなのだが。では何故後ろから手の動きを撮影していたビデオを止めたのか?

もちろん、そのまま手を動かしつづけていることがわかれば、「古瀬絵理が倒れこんだこと」と、「気を送っていたこと」とが無関係であることが絵面で一発でわかってしまうからだろう。




古瀬絵理が倒れこんだ瞬間の分解映像。
古瀬が倒れたのは気功師の手の動きとはまったく関係がなく、
ただのビデオの編集(三画面の入れ込み)でそう見せかけているだけ。



何故このような安易なトリックを用いたのであろうか?
セロのマジック(あれもビデオの編集だが)だってもうちょっとマシな出来なんだがなあ。

というか、マジックの番組作りたいんだったらちゃんとした手品師とかマジシャンを呼んで作ればいいのに。

さらによく考えてみるとだ、テレビドラマ「トリック」で散々こんな「マジック」のネタばらしをやってきたのは他の誰でもなく「テレビ朝日」自身なんだけどね。

もし、本当に気のチカラで古瀬を倒した、ということを証明したいのであれば、高解像ビデオカメラを使い、手の動きと古瀬を同時に一本のカメラで写せばいいだけだ。それがこの場合もっとも正しい撮影の方法になる。そんな簡単なことも思いつかなかったというのはここの番組制作スタッフ全員がアホに近いか、でなければあらかじめ意図的にこの方法を取ったかのどちらかしかない。さあ、どちらなのであろう。

ちなみにこの番組に登場した気功師は于雷(ゆう・れい)氏。中国からやって来て千葉在住の人。在日十数年になるという。

みた感じ初めから「騙そう」とかそういうことをしようとしているようには見えない。

第一に、スタジオで荒俣宏の質問に対して「相手の潜在意識に対して働きかけている」ときっぱり答えている。つまりどういうことかというと、「外気功」が一種の暗示効果であるということを言っているのである。

どちらかといえば、番組スタッフがこの人を騙して連れて来たというほうが正しいような気がする。

もうひとつ、むしろこちらの方が問題かもしれないのだが、東京電気大学の町好雄教授による「科学的な測定」の「科学としての真実性」ほうか。

この町教授という人、確かに人柄としては「いい人」ではあるのだが、「超能力」に関する実験ではいつも大きな勘違いというか問題の多い実験ばかりやっている。

昔は「番組のスタッフに騙されているのかなぁ?」ぐらいにしか思っていなかったのだがこうまで同じようなミスを繰り返しているところを見ると、この人の中にある種のあせりのようなものがあるのではないかという疑念が浮かんでくる。

今回も、試験者の血流量が多くなったり、血圧や体温が上昇したという事実を前にして「何かはある」と言っていた。(そりゃなにかはあるはずだ)

がしかし、その「何か」と試験者の体内に起こった計測の結果という事実との因果関係を明確に、確率的に証明するためには、たったひとりの「能力者」を呼んできて何度実験したってそんな結果にはなんの科学的な意味はないのだということを認めたがっていないようにさえ見える。

そんな「科学的な実験」なんかがあるはずがない。科学者である町教授だってそんなことぐらい理解しているはずだ。

ここで行われている「実験」というのは、映画やドラマでやっている「科学の実験」のシーンと同じでただのフィクションでしかない。

言葉はキツいが、この番組のスタッフは町教授のことをある種の「マッドサイエンティスト的な科学者・大学教授」として使っているに過ぎないのだ。

さらに、教授自身もそんな役割を振られてこんな番組で使われているということを知っていながらこの手の番組に出ているのではないだろうか。そんな気がするのだが。


「あるある大事典」の捏造問題でも喧(かまび)しく言われていることだが、この種の実験のためには複数の「超能力者」と複数の被験者を用意して何度も何度も実験を繰り返さなければ正しい実験結果は得られない。

この人は今でもユリ・ゲラーが行なった実験を「本物」だと信じているのであろうか?だとしたら悲しい話であるが。

まあ、「今回も騙された」、ということでいいのではないでしょうか。由美さん。

で、次は同じ番組内での「予言」であるが・・・(笑)


※文章のおかしな部分に手を入れ、誤字脱字を校正しました。また貴重なビデオを貸していただいた「いちかわ・ひろし」氏に対して御礼を申し上げます。(2007.02.04)

※問題の部分をビデオ撮影して分解写真として追加しました。この行為が著作権違反であることは充分承知の上での行為です。もちろん、そうしなければならないという強い義務感があったこのような行為に及んでおります。(2007.02.16)

※この記事にはコメントはつけられません。コメントは最新の記事かトップの記事にお願いします